Zenzanon80mm/f2.8について


ブロニカの数あるレンズ群の中で、ひときわその名を誇らしげに語っているレンズがあります。それがZenzanon80mm/f2.8です。生まれは東ドイツのカール・ツアイス・イエナ。




なかなか入手できなかったZenzanon80mm/f2.8を英国から手に入れたことをきっかけに、今回手持ちの標準レンズの性能テストをしてみました。
 左から順に、Zenzanon80mm/f2.8、Zenzanon80mm/f2.4、Zenzanon75mm/f2.8、Nikkor7.5cm/f2.8で、Nikkor以外は総てマルチコーティングレンズです。
 標準レンズはそのシステムカメラの基本となるレンズ。それだけに最も面白く、最も奥が深いレンズでもあります。

皆さんも御存知のように、ブロニカカメラは当初より日本光学からレンズ供給を受けていましたが、当時一眼レフカメラの売り上げが上昇気流に乗り、同社のF、そして1971年に発売開始されたF2のためのレンズに追われる日本光学は、ブロニカからの発注に対して素早い対応が出来ないような状況にありました。
 そこで同社は自前のレンズを早急に立ち上げるプロジェクトを発足させたものの、一朝一夕に出来るものではない。そんなことから1972年のEC発売に合わせて橋渡し的に生まれたのが、このZenzanon80mm/f2.8です。

このレンズは1940年代に設計されて50年代の初めにその少数がローライフレックスに使われたビオメタール80mm/f2.8そのものです。その後、新種ガラスを使ったシュナイダー社のクセノタール80mm/f2.8やカール・ツアイス社(西ドイツ)のプラナー80mm/f2.8といった超有名かつ優秀なレンズとなって発展したものの礎です。
 それが20年の時を隔てて新種ガラスを採用され、さらにマルチコーティングを施されてZenzanonとして甦ったのですから、レンズ好きだったら見逃せないアイテムです。

果たしてその結果は?
 作業は三脚にカメラを据えて、開放、f5.6、f11と撮っていき、レンズを交換する作業の繰り返しです。
 いずれのカットも右前のタイヤにピントを合わせて撮影をしましたので、カメラから同距離にあるナンバープレートにもピントが来ていることになります。
 六ツ切プリントではその描写の違いがよく判るのですが、ネット上でその半分もお伝えできないのは歯がゆいばかりですが・・・。
 開放では白いナンバープレートの周囲に僅かな滲みが発生しています。f5.6に絞るとこの滲みも消えて(恐らくf4でも消えていると思いますが)フェンダーラインなどは艶めかしいほどのボディーの張りに写っています。さらに絞ったf11ではその張りがボディー全体に拡がり、ワックス掛けなどしたことがないにも拘わらずフェラーリを思わせるような潤いを感じさせる漲った輝きを表現してくれています。
 光学的には「光の滲み」というのは性能が劣る証拠ということになっていますが、写真という芸術においては必ずしも学問とは一致しないもの。撮影者はその弱点を武器に替えてその持ち味を活かす方法を選ぶことが出来ます。
 そういった意味で「開放」を積極的に使ってみたいレンズと言えましょう。

最後にその他のレンズについても御紹介をしておきましょう。
 Zenzanon80mm/f2.4は富岡光学、Zenzanon75mm/f2.8は東京光学のOEMと云われています。
 今回はZenzanon80mm/f2.8でのプリントしか掲載しませんでしたが、4種類のレンズを各々3種類の絞りで撮影。トータル12カットを六ツ切に引き伸ばして比較してみましたが、どんなレンズでもその特徴が一番顕著に現れるのが絞り開放での撮影時。今まではZenzanon80mm/f2.4が柔らかい描写だと思っていたものが、その座は一歩Zenzanon80mm/f2.8に譲る結果となり、Zenzanon75mm/f2.8はコントラストがハッキリしつつも線の細い描写、Nikkor7.5cm/f2.8は相変わらず男気のある線の太い描写ということを確認しました。
 これらの特徴を踏まえて、レンズを使い分けるのもカメラ好きの醍醐味ではないでしょうか?あたかもオーディオマニアが聞く音楽によって、カートリッジを換えるのにも似て。
 機会を見つけてポジカラーでの撮影も試み、色再現の比較もしてみたいものです。




開放 f2.8


f5.6


f11


共通データ:BRONICA S2 NEOPAN PRESTO-100


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