50mm対決 NikkorとKomuraの撮り比べ



たまたまSUPER-KOMURA 50mm/f3.5などという珍しいレンズを入手できたので、NIKKOR-H 5cm/f3.5と撮り比べてみることにしました。
 6x6版での50mmというのは、35mm版で例えるならば焦点距離35mmのレンズのような画角ですから、とても使いよいレンズと云えるでしょう。ただ、使いやすいということは、ともするとダルな構図に陥りやすく、みそぎをするような気構えで撮る標準レンズとは一線を画します。

レンジファインダーニコンに没頭していたときは、純正のNikkorの魅力のみながらず、いわゆるサードパーティーメーカーのレンズの魅力にも執りつかれてしまったものです。
 KomuraやTanarといった二級品のレンズたち。良く云えばどれも個性的で、悪く云えば当たり外れの激しいものでした。
 仕事では失敗は許されませんが、趣味とは面白いもので、外れを引いたときの喜びは例えようもなく、これこそ二級品を手にする醍醐味と云えるでしょう。

云うまでもなく、写真とは自己表現のひとつで、何もカッチリ写っていればイイというものではありません。
 例えばライカのズマールのように「4Bの鉛筆で描いたようなタッチ」もまた使いようによっては自己表現の有能な道具たり得ますし、ズマリットのようなボケの汚いレンズも使い方を工夫すれば、優秀な右腕にすらなってくれます。
 そういった意味でも今回のSUPER-KOMURAには大いに期待を寄せたのですが、結果はのちほど述べさせて頂きます。

タイトル写真はNikkorをf11まで絞って手持ちの1/30で愛車を撮ったものです。
 ブロニカS2はシャッターショックが大きいので、スローシャッターの手持ちは御法度のように云われますが、フォーカルプレーンの動作順序を理解していれば、決してそうではないことが理解できるはずです。
 なお、ここに掲載している写真は総て「PRESTO 400を20度のD-76現像原液で6分10秒現像処理したフィルムを2400dpiでスキャンしたもの」です。当然、画像処理ソフトでの手心は加えておりません。
 作品はクリックして頂ければ大きな画像で楽しんで頂けますので、四隅の描写などを仔細に御覧頂けると思います。また、左側がNikkor、右側がKomuraに統一されています。



 

まずは外観から。Nikkorは前玉が大きくいかにも「広角でござい!」といった風情なのに対して、Komuraはレトロフォーカスのレンズ構成が強いのか、同じ明るさなのに前玉は小さいです。フィルター径は82mmと77mm。Nikkorはレンジファインダー用レンズの横綱5cm/f1.1のような風格すら漂っています。
 後ろ側を見ると、逆にKomuraの方が僅かに大きいレンズを使っています。全長が長いことといい、これはレトロフォーカスの証拠ですね。

 

S2に装着してみたところ。Nikkorは前玉が大きいので立派に見えますが、Komuraは中望遠のような錯覚すら起きます。



 

早速2本のレンズを携え、城下町松本の街をぶらついてみました。道は区画整理され近代的に生まれ変わりましたが、まだそこここに旧い建物が点在し、いつ訪ねてみても興味が尽きないものです。
 旧い薬局の店構えをf8半に絞って撮ってみました。ここで注目したいのは、一番下と二番目の線です。かなり煽って撮っていますが、Nikkorは殆ど湾曲せず踏ん張っているのに対して、Komuraは湾曲し始めています。これはとりも直さずレトロフォーカスの特徴です。

 

今度は逆に俯瞰ぎみに足元の井戸ポンプを入れて撮ってみました。バックにまでピントを合わすと画面が煩くなるので、絞りはf5.6半です。ポンプの立体感はNikkorの方が勝っていますが、左奥の「なまこ壁」の柱のボケはKomuraの方が素直です。

 

一転して絞りをf4半まで開いて撮ってみました。かなりな近接撮影になりますから、ネズミの顔にピンポイントでピントが来ています。好みの違いもあるでしょうが、Komuraの方は右の柱が平板に描写されています。手持ち撮影だったため僅かに距離が違ってしまいましたが、Nikkorの方が被写界深度が広く、手前にもピントが来ているようです。

 

古くからある旅館をf11半まで絞り込んで撮っています。右上の瓦はNikkorでは僅かに流れていますが、Komuraでは踏ん張っています。しかしNikkorの方がコントラストは高いようです。




最後に再び愛車をNikkorで写してみました。かなり近距離で絞りはf5.6ですから中央のMGバッジのみにピントが来ています。このカットは愛車をガレージで修理しているときに撮ったものなのですが、外は小雨模様でバンパーには水滴が付着しています。瑞々しい質感を期待して撮ったものなのですが、ボクの欲しいような瑞々しさは得られませんでした。また違うシチェーションで再チャレンジしてみましょう。

このように撮り比べた休日の午後でしたが、ともに「一勝一敗の成績」で終わりました。逆に云えば、Komuraは決して悪いレンズでもクセ玉でもなく、素直で優秀なレンズという印象を受けました。
 先にも書きましたが、ホントはもっとクセ玉であって欲しかったのですが、これからはNikkorと気分によって使い分けていくことにしましょう(^^♪。

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